馬喰町アートプロジェクト Beyond Facade レポート

今回の企画は不動産を管理するLooplaceさんとのコラボ。

馬喰町にあるかつて衣料品問屋だったビルをリノベする前の、隙間の期間にアートプロジェクトを展開した。

かつてあった記憶をよびおこし、空間の気配を感じることができる展示、ワークショップ、公演、作品販売などを実施した。

馬喰町エリア一帯は、江戸時代から続く繊維問屋街ですが、現在は高感度なギャラリーや飲食店、マンションなども増え、古いものと新しいものが入り混じり、独特の雰囲気をたたえている。

2019年、オリンピック・パラリンピックを控え、東京ではスクラップ&ビルドが繰り返され、街は新しい姿と生まれ変わっていく。非常なスピードで、様々な世界のルールが変更されていく中、街の表層(正面)からは、その歴史や街の記憶を伺うことが難しい。

本企画では、物事の表層の薄皮をはぎ、敏感に反応するアーティストを招聘。さまざまな事物の奥底にある物語や、記憶の気配を感じてもらおうとした。

【企画詳細】

会場1階

物販やワークショップ会場としてイベントを実施。

会場2階 展示

半谷学「さしがさばな 差傘花 枯れた傘に再び花が生ずる」

古い傘や壊れた傘を再利用した立体作品のインスタレーション。
解体した傘の記事部分は、ワークショップ素材としても利用される。
環境問題について考えるきっかけとなる作品で、SDGsについて関心を寄せる来場者などから、
難しい問題について考える入り口として素晴らしい、刺激になったとの声が聞かれた。

会場2F 展示

三森早苗

羊毛フェルトを用いた作品インスタレーション。繊維問屋街である馬喰町と響き合う作家として招聘。色鮮やかな色面が印象的で、空間を一気に変容させた。会期最後に行われた即興ダンス公演でも、立体や作品とのコラボが起き、魅力的な空間となった。

会場3F 宮田明日鹿 「おしらあそばせ」

編み機を改造して、写真を織れるようにした機械を用いて、作ったインスタレーション。松本で滞在制作した際に、馬娘婚姻譚をモチーフに、そこで考えた物語をもとに創作したもの。見る人によって、また、時間帯によっても印象が大きく変わるインスタレーション。

会場4~6F ダンスカンパニー ときかたち 公演

尾花藍子 非言語コミュニケーションワークショップ

公演:約1ヶ月の滞在制作を経て、馬喰町のビル空間でしかできない公演を展開。

人のいなくなったビルで、かつてのビルのあり方に想像力を膨らませ、次第に五感が研ぎ澄まされていくような体験を提供。コンテンポラリーダンスの枠に留まらない、独特な世界観で鑑賞者の身体感覚を変えるような体験が好評だった。

ワークショップ:尾花藍子が、言葉を介さない身体によるコミュニケーションワークショップを展開。公演でもテーマとなる、人と人との間、気配を感じ取れる心身を得られるように参加者を導いた。

会場7F 即興参加型ワークショップ

ダンサーの廣瀬暁子の発案で、宮田明日鹿の作品で用いられる廃棄された糸を用いて、壁面や天井に糸を張り巡らせる参加型のワークショップを展開した。アーティスト同士の出会いによる科学反応で新しい表現が生まれる良い事例となった。参加者も技術を必要とせず、自由に糸で空間表現ができることを楽しんでいた。年齢性別を問わず参加者には好評だった。

会場8F female artists meeting 「girls night out」

女性が一人ではあるき辛い深夜の時間を、グループで歩きながら、ジェンダー問題についてなど語り合う企画。

馬喰横山の川沿いには、屋形船があり、かつての江戸風俗の気配が感じられ、街歩きとしても面白いものとなった。

会場1F 宮田明日鹿 「写真を編むワークショップ」

編み機を用い、参加者の撮った写真を編むワークショップ。

誰でも参加ができ、本人にしかわからない図柄に編み上がるところが好評。今は製造されていない編み機がアーティストの工夫で新しい表現手段に生まれ変わるというところも、機械や技術が好きな鑑賞者から関心を寄せてもらえた。

会場1F Rescue Umbrella Project ワークショップ

古くなったり捨てられた傘をリサイクルし、あずま袋を作るワークショップ。傘の解体方法から、バッグの縫い方まで丁寧に話を聞きながら参加できる。環境問題について楽しく考えながら、出来上がるバッグの質も高く、満足度がとても高いワークショップだった。SDGsなどについて学び、環境問題について取り組むビジネスマンなどからも好評の声が聞かれた。

会場2~3F 廣瀬暁子即興パフォーマン

展示最終日に、即興的に行われたパフォーマンス。

宮田明日鹿のワークショップ着を身に着け、2階から3階へとダンサーが踊りながら観客を誘導した。作品のモチーフから発想を得たダンスは緊張感があり、鑑賞者を惹きつけた。

様々な作家たちが集まったことで、新しいコラボレーション作品も生まれ、楽しい企画となった。町や不動産の活用の可能性も感じられた。

実施内容詳細

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